胡桃ピンク


炊飯器の蓋をひらいたとき、いつもはっとする

ピンクだ、とおもう

赤みがかった地味なベージュ色だけれど、いつも、なぜか、
うわあピンク色、ておもう


胡桃をほうりこんで炊くご飯は、しっかり浸水して炊くと、、思いがけない色に染まっている

あまり胡桃ごはんをつくることはないからなのか、
食べているうちに、ご飯がどんどん、もともとの胡桃の色にもどってしまうからなのか。
わすれてしまう。ピンク色にはっとしたことをいつもわすれてしまうから、
いつも驚く

ピンクだ!と、おもう
ほくほく、やわらかくなった胡桃は、ほのかに甘い
でも、噛みしめると胡桃のえぐみが口のなかにひろがって、すこしだけ
うら淋しいきもちになる

川越に、以前、おじいさんとおばあさんが営んでいる、胡桃ごはんを出す店があった
ものすごく地味だけど、評判のあるお店だった
いちどだけ、母と訪れたことがある

その時は猫がいて、店内でそそうをしたものだから、小さなお店は、終始きょうれつな匂いがしていた
母といっしょに、うつむいて、がまんして、胡桃ごはんをたべた
胡桃ごはんの味は、おもいだせない

それでも炊いてしまう胡桃ごはん
炊いて、驚いて、食べて、おもいだす
猫のおしっこのこと

そしてまたわすれてしまう

忘却の胡桃ごはん
忘却の胡桃ピンク

なにもかもわすれてしまいたいときに炊こうとおもったって、
わすれてしまうことすら、わすれてしまう、そんな味わいのごはん
胡桃は、どっさり入れすぎないこと
刻まないこと

ときどき、お箸が、やわらかいピンク色のお米のなかに、ころん、と木の実をみつけることがうれしい
あ、胡桃がいたんだった、と、おもいだす



◯胡桃ごはんの作り方


お米二合につき、くるみ8粒から10粒くらいを放りこみ、塩ひとつまみを加え、
しっかり浸水させて炊く。お水は好みでほんのすこし、増やす
じぶんは、少々柔らかめに炊きあげるのが好みです

炊きあがったら、蓋をあけて、天地をかえす
みんなでたべるのなら、食卓でいっしょに蓋をあけるとよいかもしれない
でも、わすれてひとりで開けてしまうかもしれない
それもまたよし

炊けたらはやめにたべてしまう
どんどん地味になるから

どうぞ、よきごはんを。
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